「最近、性交するたびに痛みがある」
「つらい痛みで性交を楽しめない」
上記のように、性交時の悩みをもつ方は多いのではないでしょうか。性交時に感じる痛みを性交痛と呼びます。
本記事では、性交痛の症状や原因を解説しています。対処法・治し方も紹介しており最後まで読むことで性交痛について理解が深まるでしょう。
目次
性交痛を感じている女性は6割もいる
性交痛に悩む女性は多く、6割近くもの女性が性交時に痛みを感じていることがわかっています。
ジェクス・ジャパンセックスサーベイ2024によると、全年齢の平均で58.8%の女性が性交時に痛みを感じていると回答しています。ジャパンセックスサーベイは、18歳〜69歳の全国の男女5,000人が回答したインターネット調査です。
年代別にみると、一番多いのは40代で62.4%、一番少ない年代である10〜20代で53.6%です。この結果を見る限り、性交痛を感じている年代差は少ないといえるでしょう。
性交痛がある中での性交の満足度は、10〜20代は87.8%と高い一方で、50代は40.2%です。高い年代では、性交痛が性交の満足度を大きく下げていることがわかります。
参照:ジェクス株式会社「JEX JAPAN SEX SURVEY 2024」
性交痛とはどんな痛み?
性交痛とは、性交時に感じる痛みのことを指します。痛みの場所は、膣の入り口付近や奥などさまざまです。
性交痛の症状
性交痛は、挿入時など性交の最初だけ痛い場合や、性交中ずっと痛みがある場合、性交後まで痛みが続くケースなどさまざまです。
また、今まではなんともなかったのに、久しぶりに性交したときや更年期に入ったら痛くなったなど、途中から痛くなる場合もあります。痛みの程度も、がまんすれば性交を続けられる方から、痛みがひどく挿入さえできない方まで人それぞれです。
痛みの感じ方は以下のとおりです
・ヒリヒリした痛み
・ズキズキした痛み
・締め付けるような痛み
・刺すような痛み
いずれも、性交を楽しむには支障があるでしょう。
性交痛には入り口付近と奥の痛みがある
性交痛は、外陰部や膣の入り口付近が痛む場合と、膣の中や奥の方が痛む場合があります。外陰部や入り口付近の痛みを入口部性交痛と呼び、膣の奥の方が痛む場合は深部性交痛と呼びます。
入り口部性交痛の多くは、男性器の挿入時や摩擦による痛みです。膣や外陰部の潤い不足、筋肉の硬直によることが多いですが、生まれつき処女膜が厚い処女膜強靭症の場合もあります。
ほかに、炎症を起こしていたり婦人科系の病気になっていたりするケース、更年期や出産の影響などさまざまです。膣の奥が痛い場合は、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣腫瘍など婦人科系疾患の疑いがあります。
膣の乾燥による性交痛は、外陰部や膣の中や入り口、中などさまざまな場所で起こります。
性交痛の主な原因8つ
性交痛の原因は、精神的な影響や体質的な原因、更年期や出産により発生するなどさまざまです。また、いくつかの原因が重なっている場合もあります。以下に主な原因を8つ解説します。
精神的な影響
・ストレス
・緊張
・トラウマ
・パートナーや性行為に対する嫌悪感
・不眠
・疲労
久しぶりの性交に対する緊張・不安や、過去にうまくいかなかった経験などが、精神的原因となります。また、性交がよくないもであるといった偏見や、パートナーに対しての嫌悪感が原因となるケースもあるようです。
精神的な影響は、疾患など他の原因により引き起こされる場合もあります。また、性交がうまくいかないたびにネガティブなイメージが増幅され、悪循環に陥ることがあります。
ストレス解消を心がけ、なるべくリラックスした状態で性交できるよう心がけましょう。
処女膜強靭症
挿入時に強い痛みをともなう場合には、処女膜強靭症かもしれません。処女膜強靭症は、生まれつき処女膜が厚かったり、固かったりする状態のことです。
膣が完全にふさがり、生理時の出血がない処女膜閉鎖症とは違い、処女膜強靭症は普通に生理があります。そのため、なかなか気づかないことが多く、性交痛が続くことで、はじめて処女膜強靭症を疑うことも多いです。
性交をこれまで何回もしているにもかかわらず、挿入時に強い痛みが続くようであれば処女膜強靭症の可能性があります。
処女膜強靭症は、筋肉の硬直による性交痛と違い、症状を自分でコントロールできません。リラックスできているにもかかわらず、挿入時に痛みをともなうようであれば、診察を受けることをおすすめします。
処女膜強靭症を治すには、手術による治療が必要です。
婦人科系の疾患
性交痛の原因の一つとして、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣腫瘍などの婦人科系疾患にかかっている場合があります。性交時に膣の奥が痛むことが特徴です。
子宮内膜症は本来、子宮の内側にできるべき子宮内膜が、ほかの場所にできてしまう病気です。子宮の奥と直腸の間にできることが多く、性交時に男性器を突いたときに、膣の奥にあたることで痛みます。
子宮筋腫は、子宮を構成する平滑筋にできる良性の腫瘍で、30代以上の2〜3割に発症する病気です。
腫瘍が小さいうちは症状がほとんどなく、妊娠への影響もありません。性交痛以外の症状としては、月経痛や経血量の増加などがあげられます。
卵巣腫瘍は卵巣にできる腫瘍で、小さいもので数センチ、大きくなると20センチ以上になるなど、大きさはさまざまです。
腫瘍が大きくなると、臓器やリンパ管、静脈の圧迫などの症状があります。卵巣腫瘍は悪性の場合もあるため要注意です。
炎症や性感染症
炎症や性感染症の感染が、性交痛を引き起こしている場合もあります。性交痛の原因となる炎症や性感染症は以下のとおりです。
・接触性皮膚炎
・カンジダ症
・性感染症
肌に合わない下着や生理用品による擦れ、締め付けなどで接触性皮膚炎となる場合があります。蒸れや不衛生もかぶれの原因となるため要注意です。
カンジダ症は、膣内の常在菌が異常繁殖して起こる炎症です。疲れやストレスなどで体の免疫が弱くなったときに、普段抑えられていたカンジダ菌が増殖します。性交痛のほかに、膣のかゆみやおりものの変化などの症状があることが特徴です。
性感染症は、クラミジア感染症や淋菌感染症などです。性感染症の多くは、性行為によって感染しますが、タオルの共用などで感染する感染症もあります。
ラテックスアレルギー
コンドームの使用によるラテックスアレルギーが、性交痛の原因となる場合があります。コンドームの素材の多くには、天然ゴムが使われているためです。
ラテックスアレルギーは、天然ゴムに含まれるラテックスタンパク質と肌が接触することで引き起こされるアレルギーです。じんましんによる痛みやかゆみ・赤み・腫れを引き起こします。
症状がひどい場合には、呼吸困難・喘息症状・アナフィラキシーショック(血圧低下や意識障害、失神)を引き起こすことがあるため軽視できません。
ラテックスアレルギーは、コンドームだけでなく、ゴム手袋の使用など日常生活の中でも起きます。天然ゴム製品の使用により、上記症状のある方は注意が必要です。
アレルギーがある方は、天然ゴムを使用していないコンドームを選びましょう。
更年期の影響
更年期による影響で性交痛になる場合があります。更年期になると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少するためです。
エストロゲンが減少すると、膣内膜が薄くなり乾燥するうえ膣壁が弾力を失い、膣がしぼんだようになります。
膣の分泌物も減少するため、潤い不足となり性交痛を引き起こします。膣の乾燥は、膣内が傷つきやすく雑菌も繁殖しやすくなるため、炎症が起きる原因です。
更年期の影響は、放置していても治ることはないため治療が必要となります。方法はエストロゲン投与もしくはレーザー治療です。
出産
出産の影響が性交痛の原因になることがあります。出産の影響は以下のとおりです。
- 一時的なエストロゲンの分泌低下
- 外陰部の切開・裂傷の恐怖感やひきつれ感
- 出産時の苦しみ・もう出産したくない思い
出産後は、一時的にエストロゲン分泌が低下し、潤い不足になりやすいです。また、出産の痛かった経験や、陰部が裂けてしまうのではないかといった不安などの精神的な原因も影響します。
パートナー側の原因
パートナー側の原因により性交痛になる場合があります。たとえば、前戯が十分でないことによる潤い不足です。
ほかに、体位が合っていないことや乱暴なテクニックによるもの、男性器が大きく体に合っていない場合などがあります。
男性の中には、間違った情報を得て無理な行為をする方がいるかもしれません。性交痛がパートナー側の問題である場合には、事情を話し協力してもらうことで解決できる場合も多いです。
性交痛の対処法・治し方
性交痛にはいくつかの対処法があります。すぐにできることから、はじめてみると良いでしょう。
パートナーの理解・協力を得る
パートナーの理解・協力を得ることで、性交痛が解消できる場合があります。対処法は以下のとおりです。
・前戯を十分にしてもらう
・無理のない体位にしてもらう
・性交前に会話やスキンシップする
・環境を整える
前戯を十分にしてもらうことで膣の潤いを得られます。いきなり性交にはいるのではなく、事前にスキンシップや会話を楽しみ、緊張をほぐすことが大切です。
照明を暗くしたり、ムーディーな音楽を流すなど環境を整えることで、リラックスできます。
まずは、性交痛に悩んでいることをパートナーにしっかり伝えることが重要です。
パートナーに対する申し訳なさや恥ずかしさから、言いづらいかもしれません。しかし、事情を話し協力してもらうことで、性交痛を解消できる可能性があります。
潤滑ゼリーを使用する
潤い不足の性交痛には、潤滑ゼリーを使用するのも効果的です。潤滑ゼリーは、性交前にデリケートゾーンに塗布するだけで、手軽に潤いを得られます。
注意点は、全身用のローションは使用しないことです。全身用のローションは、肌を乾燥させる成分が配合されている製品があり、膣の乾燥を助長させるおそれがあります。
使用に際しては、事前にパートナーに伝えておいた方がスムーズでしょう。潤滑ゼリーは、安全性の高いリューブゼリーがおすすめです。水溶性であるため、さらさらした使用感で水ですぐに洗い流せます。
潤滑ゼリーのデメリットは、外出先で使用する際には持ち歩く必要があることです。また、性交痛の根本的な改善にはなりません。
保湿・マッサージで膣ケアする
保湿やオイルマッサージなどの、膣ケアをする方法もあります。
保湿は、膣専用の保湿クリームやワセリンを入浴後に使う方法です。タオルで体を軽く拭き取った後、清潔な指で大陰唇を中心にやさしく塗布します。
保湿することで、膣の乾燥を防ぎ潤いを保ちます。いやなにおいや黒ずみの防止にも効果的です。
マッサージによる膣ケアは、専用のオイルを使い膣をほぐします。性交痛の改善のほか、感度アップも期待できます。
クリニックで治療する
クリニックで治療することで、高い効果が得られます。性交痛の治療方法は、手術による治療とレーザー治療があります。
処女膜強靭症は、処女膜を切除するため手術が必要です。膣の乾燥や潤い不足による性交痛は、レーザー治療により解消できます。レーザー治療は、膣の細胞を活性化させることで体質からの改善が可能です。
これまでに、セルフケアを試してみたものの、思うような効果が得られなかった方にもおすすめします。
ほかに、レーザー治療は外陰部のホワイトニングや尿もれ、ゆるみ改善など、デリケートゾーンの多くの悩みを解決できます。
クリニック受診のタイミング
性交痛でクリニックを受診するタイミングは、痛みが激しい場合や性交後も長時間痛みが残る場合です。出血をともなう場合や、外陰部に腫れや赤みがみられるときも、診察を受けた方が良いでしょう。
性交時に膣の奥で痛みを感じる場合は、婦人科系の疾患にかかっていることが考えられるため、早めに診察をおすすめします。
クリニックでの診察は、恥ずかしい、あるいは他の人に知られたくないなどの理由から、どうしてもためらいがちです。しかし、クリニックで医師に診察してもらうことで、適切な対処法を提案してもらえます。
当院は、完全予約制の女性限定クリニックです。他の患者と顔を合わせることなく、安心して診察を受けられます。
【まとめ】不安があれば早めにクリニックで診察を
性交痛とは、性交時に痛みを感じる症状を指します。膣の潤い不足や筋肉の硬直などが主な原因です。
性交痛は、精神的な理由や更年期、パートナー側の問題などさまざまな要因で引き起こされます。症状によっては、セルフケアやパートナーの協力によって改善できる場合もあるでしょう。
しかし、セルフケアでも改善されない場合や、体質からしっかり改善したい方は、クリニックでの治療をおすすめします。当院では、数多くのライセンスと経験をもつ院長が診察から施術、さらにはアフターフォローまで担当するため安心です。女性のデリケートゾーン全般の悩みはお任せください。
満行 みどり
略歴
国立佐賀医科大学(現佐賀大学)医学部卒業。その後九州大学医学部付属病院第二外科、佐賀県立病院などで外科、救命救急、麻酔科全般を習得。
聖心美容外科東京院、大阪院、福岡院にて勤務後、横浜院院長、全国診療医長を歴任。
婦人科形成、脂肪吸引を始めとする多くの症例に携わる。
レーザーによる女性器の若返り治療、膣の引き締め、外陰部形成のライセンスをアメリカのビバリーヒルズにて日本人の女医として初めて習得。東京の広尾に、日本人初となる女医による女性器形成専門クリニック、みどり美容クリニック・広尾を開院する。また「女性器形成」「女性性機能障害」のスペシャリストとして、様々な論文執筆、講演会、ドクターへの指導を行う。
資格
所属学会