性交痛に関する悩みを抱えている女性は多くいます。ジェックス株式会社の調査によると、全女性の約60%が何らかの形で性交痛を経験するとされています。性交痛は、性生活の質を低下させるだけでなく、パートナーとの関係にも影響を与えることがあります。ホルモン療法は主に更年期障害の治療に使われますが、性交痛にも効果があることが知られています。
この記事では、ホルモン療法が性交痛の治療にどのように役立つかを詳しく解説します。
参考:【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ2024[PDF]
目次
ホルモン療法(HRT)とは?
ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy: HRT)は、女性ホルモンを補充することで主に更年期障害の症状を緩和するために用いられる治療法です。更年期になると女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少し、様々な症状が現れます。HRTは、減少したホルモンを補充することで、これらの症状を改善する治療です。
HRTの主な効果
- ホットフラッシュや寝汗の軽減:エストロゲンの補充により、体温調節が改善され、これらの症状が軽減されます。
- 骨粗しょう症の予防:エストロゲンは骨密度を維持するため、HRTにより骨粗しょう症のリスクが低下します。
- 膣の乾燥や萎縮の改善:膣の潤いを保ち、性交痛を防ぐ効果があります。
- 心血管系疾患のリスク低下:適切なHRTは、心血管系の健康を保つのに役立つとされています。
HRTは、個々の症状や健康状態に応じて、経口薬、貼薬、塗り薬、膣剤などの形で提供されます。
ホルモン療法と性交痛の効果
ホルモン療法は、更年期障害の様々な症状を改善するだけでなく、性交痛にも効果があることが分かっています。
日本産婦人科医会の報告によると、HRTを受けた患者の約70%で性交痛の改善が見られたとされています。これは、HRTが膣の潤滑を改善し、膣壁の厚みと弾力性を回復させるためです。
性交痛を改善できる理由
ホルモン療法が性交痛を改善できる主な理由は以下の通りです。
- 膣の乾燥防止:エストロゲンの補充により、膣の潤いが保たれます。これにより、摩擦が軽減され、性交時の痛みが軽減されます。
- 膣壁の厚みと弾力性の回復:ホルモンバランスの改善により、膣壁の萎縮が改善されます。これにより、膣が柔軟になり、痛みが軽減されます。
- 膣内のpH調整:適切なpH環境が維持され、感染症のリスクが低下します。これにより、膣内の健康が保たれ、性交痛が軽減されます。
性交痛に効果があるホルモン療法4種
経口薬
- 特徴:毎日服用する錠剤です。
- メリット:簡便で調整しやすい。
- デメリット:肝臓への負担がある場合がある。
貼薬
- 特徴:皮膚に貼付するパッチです。
- メリット:一定量のホルモンを持続的に供給します。
- デメリット:皮膚のかぶれが起こることがある。
塗り薬
- 特徴:ゲルタイプの外用薬です。
- メリット:局所的に使用でき、全身への影響が少ない。
- デメリット:塗布の手間がかかる。
膣剤
- 特徴:膣内に挿入する錠剤やクリームです。
- メリット:直接膣に作用し、全身への影響が最小限です。
- デメリット:使用時に不快感を感じることがある。
ホルモン療法で治せる性交痛
ホルモン療法が適している性交痛の症状には以下のようなものがあります:
- 性交痛と更年期障害の両方が症状として現れている
- 膣の乾燥からくるヒリヒリとした痛みがある
- 膣や外陰の萎縮症状(萎縮性腟炎)がある
- 性交時の出血や痛みが発症している
これらの症状がある場合、ホルモン療法が効果的である可能性が高いです。ただし、治療を始める前に必ず専門医の診断を受けることが重要です。
ホルモン療法で治せない性交痛
以下の症状はホルモン療法だけでは治療が難しい場合があります:
心理的要因
ストレス、緊張、トラウマなどの心理的要因による性交痛は、ホルモン療法だけでは改善が難しいことがあります。このような場合は、心理カウンセリングや認知行動療法などの併用が効果的です。
婦人科系の疾患
感染症や膣炎などの婦人科系疾患による性交痛は、原因となる疾患の治療が必要です。抗生物質や抗真菌薬などの適切な治療を行うことで改善が期待できます。
痛くて入らない
処女膜強靭症などの構造的な問題による性交痛は、手術的治療が必要な場合があります。このような場合、ホルモン療法だけでは十分な効果が得られないことがあります。
ホルモン療法以外の治療方法3つ
性交痛の治療には、ホルモン療法以外にも様々な方法があります。以下に3つの治療方法を紹介します。
レーザーなど機器を使った治療
インティマレーザーなどのレーザー治療は、膣壁の再生を促進し、潤いと弾力を取り戻すのに効果的です。この治療は痛みが少なく、短時間で終わるため、多くの患者さんに選ばれています。
処女膜切開手術
処女膜強靭症の場合は、処女膜切開手術が効果的です。この手術は局所麻酔下で行われ、比較的短時間で終了します。
潤滑ゼリー(リューブゼリー)
リューブゼリーは、膣の潤いを補う即効性のある方法です。性行為の前に使用することで、摩擦を軽減し、痛みを和らげることができます。
自宅でホルモンバランスを整える方法2選
ホルモンバランスを整えるための自宅でできる方法には、以下の2つがあります。
漢方療法
漢方薬は、ホルモンバランスを整える効果があるとされています。代表的なものには、加味逍遙散や当帰芍薬散などがあります。ただし、使用する前に必ず専門医に相談してください。
食事の見直し
ホルモンバランスを整える効果がある食材を積極的に取り入れることで、性交痛の改善に役立つ可能性があります。効果的な食材には、大根、蓮根、豆腐、豆乳、白ごま、山芋、卵白、いか、梨などがあります。
具体的な食材の効果:
- 大根:消化を助け、体内の水分バランスを整える。
- 豆腐・豆乳:大豆イソフラボンがホルモンバランスを整える。
- 白ごま:良質な油分を含み、肌の潤いを保つ。
- 山芋:栄養価が高く、体力を維持する。
- 梨:水分が豊富で、体の潤いを保つ。
性交痛が気になるときはクリニックへ
性交痛は決して恥ずかしがる必要のない症状です。適切な治療を受けることで、多くの場合改善が可能です。当院では、女性の院長が完全予約制の個室で、全ての患者様にカウンセリングからアフターケアまで対応します。安心して診察できるため、デリケートゾーンのお悩みを抱えている方はお気軽にご相談ください。
満行 みどり
略歴
国立佐賀医科大学(現佐賀大学)医学部卒業。その後九州大学医学部付属病院第二外科、佐賀県立病院などで外科、救命救急、麻酔科全般を習得。
聖心美容外科東京院、大阪院、福岡院にて勤務後、横浜院院長、全国診療医長を歴任。
婦人科形成、脂肪吸引を始めとする多くの症例に携わる。
レーザーによる女性器の若返り治療、膣の引き締め、外陰部形成のライセンスをアメリカのビバリーヒルズにて日本人の女医として初めて習得。東京の広尾に、日本人初となる女医による女性器形成専門クリニック、みどり美容クリニック・広尾を開院する。また「女性器形成」「女性性機能障害」のスペシャリストとして、様々な論文執筆、講演会、ドクターへの指導を行う。
資格
所属学会