パートナーとの愛を深めるセックスですが「濡れなくて痛い」と感じ、セックスを途中で断念してしまったことはありませんでしょうか。
本記事では、セックスで濡れない原因や濡れやすくする方法や性交痛を和らげる方法について紹介します。
目次
1. セックスで濡れない原因
性交痛の原因で多いのが潤い不足です。潤い不足で膣が乾燥すると、ピストン運動の際に摩擦が起こるため性交痛の原因になります。そこで、セックスで濡れない4つの原因を解説します。
①月経前症候群によるもの
月経症候群は女性の7〜8割にみられるといわれており、月経の3〜10日前に症状がでます。月経前症候群の症状が出ている時にセックスをすると、セックスに集中できないため濡れにくさを実感することがあります。
月経前症候群には、以下のような症状があります。
- 下腹部痛や頭痛、肩こり
- 乳房の張り
- 気分の不安定さ
- イライラしやすくなる
- 不安感や緊張感の出現
- 疲れやすくなる
- 集中力低下
- 食行動の変化(甘いものが食べたくなるなど)
②心因性によるもの
「気分が乗らない」や「また痛かったらどうしよう」などセックスへの抵抗感や不安感、ストレスがあれば快感を得られず濡れにくさに繋がります。また緊張や不安から膣周辺の筋肉がこわばり、挿入時に痛みを伴うことがあります。
③婦人系の病気によるもの
性行為の際に痛みを感じると、行為に集中できなくなるため濡れにくくなります。そしてその痛みの原因が婦人系の病気である可能性もあります。膣の入口付近の痛みと奥の方の痛みでは原因疾患が異なります。以下にそれぞれの特徴や症状を解説します。
入口付近の痛み
膣の入口付近が痛む原因で多いのは、2種類の疾患です。
・膣前庭炎
膣前庭炎は、ペニスを挿入した際に膣の入口付近に痛みを感じる原因で最も多い病気です。挿入された時やピストン運動中に痛みを感じ、動きが止まると痛みも和らぎます。
原因は明らかではありませんが、何らかの理由で痛みに対する感受性が高まると考えられています。症状としては、性行為中の膣の痛みや膣周辺の灼熱感、排尿時痛があります。膣前庭炎は適切な治療を受けないかぎり治ることはありません。
・細菌性膣炎
細菌性膣炎は体内に存在する常在菌が何らかの理由で増殖して、膣内で炎症を引き起こす病気です。クラミジアやカンジダなどの性病と似た症状がありますが、性病ではありません。
症状はおりものの増加や特有の生臭さです。通常腫れやかゆみはありませんが、挿入した際に膣の入口付近に痛みを感じる場合があります。
奥の方の痛み
次に、膣の奥の方が痛む原因で多いのは、2種類の疾患です。
・子宮内膜症
子宮内膜症は、20〜30代で発症することが多い病気です。
子宮内膜という子宮の内側を覆っている粘膜が、何らかの理由で子宮の外側の組織に発生し、周囲の組織と癒着することで痛みを感じます。子宮内膜症の症状として性交痛や排便痛、下腹部痛があります。
・クラミジア感染症
クラミジア感染症は、クラミジア細菌による性感染症です。感染しても男性の約50%、女性では約75%で無症状であるため伝染しやすく、国内で最も多い性感染症とされています。
一方で、性行為のあと1〜3週間で性交痛や排尿時痛、頻尿などの症状が現れることもあります。早期に発見できれば抗生物質で治療できる疾患です。
ラテックスアレルギーによるもの
ラテックスアレルギーは、天然ゴム製品に触れることで発症するアレルギーです。
避妊の際に使用するコンドームには、ラテックスが含まれているためラテックスアレルギーの方は注意が必要です。症状としては、性交痛や膣内の腫れ、全身の蕁麻疹や呼吸障害があります。
2. 「濡れない」を改善し性交痛を緩和する方法
ここでは「濡れない」を改善する方法を紹介します。いずれも自宅ですぐできるため参考にしてください。
水分を多めに摂取する
潤いの源である膣分泌液の主成分は水分です。そのため体内の水分が枯渇していると、膣分泌液量も減少します。
通常性的興奮により下半身に血液が送られ、膣内の毛細血管が拡張して膣分泌液が分泌されます。水分不足の状態だと血行不良で、下半身に十分な血液が送られないため膣分泌液量が減少します。日頃からこまめな水分補給を心掛けましょう。
膣のケアをする
性交痛を経験すると「次も痛かったらどうしよう」と緊張や不安を感じ、膣周辺の筋肉がこわばります。筋肉がこわばると痛みを感じやすくなり、濡れにくくなります。すると今度は、痛みを感じやすくなり緊張や不安が強くなる、という悪循環に陥ってしまいます。
そこで痛みの出る場所を確認しながら膣のケアをすることで、性行為時の緊張や不安を軽減できるでしょう。膣のケアは、低刺激の保湿剤や専用のオイルを入口付近から奥の方にかけてゆっくり優しく塗り込むのがポイントです。
前戯を工夫する
濡れやすくするためには、前戯を工夫し快感を得ることが必要です。下半身の血流を良くするためにはオキシトシンというホルモンの分泌が不可欠です。
オキシトシンは、快感を得ることで分泌量が増し効果を発揮します。つまり前戯を工夫して快感を得ることができれば自然と濡れやすくなります。
しかし一人で解決するのは難しいため、パートナーに相談するのもよいかもしれません。
これらを試してみても濡れを実感できないこともあるでしょう。そのような場合には、婦人系の病気の可能性があります。不安な場合はすぐに専門の医療機関を受診するようにしましょう。
3. 性交痛をがまんしてはいけない理由
「色々試したけど濡れない、少々の痛みは我慢しよう」このように性交痛を我慢してはいけません。痛みを我慢してセックスを続けると、悪影響を及ぼす可能性があります。
放置すると不妊症の原因になる可能性がある
潤い不足による性交痛であれば、問題ありません。しかし婦人系の病気によって性交痛が引き起こされている場合、放置すると不妊症になる可能性があります。
仮に子宮内膜症やクラミジア菌に感染している場合、早期に治療しなければ不妊症になるケースがあります。我慢できないほどの痛みや奥の方が痛む場合には、早めに専門の医療機関を受診するようにしましょう。
ラテックスアレルギーの場合は重篤症状が出る可能性がある
コンドームは、天然ゴムが使用されているためラテックスアレルギーの人が使用すると性交痛や赤みやかゆみ、じんましんなどの症状が出ます。
またアレルギー症状で最も注意すべきは、アナフィラキシーショックです。アナフィラキシーショックは、血圧の低下や意識障害などを引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。
「我慢できる痛みだから我慢しよう」と放置しておくと非常に危険です。コンドームを使用した際に痛みとかゆみや蕁麻疹が見られたら行為を中断し、医療機関を受診するようにしましょう。
パートナーとの関係性に影響が出る
性の悩みは、デリケートなためパートナーに性交痛のことを打ち明けるのにも勇気が必要です。
個人差はありますが、相手によっては「そんな大切な話なのに自分は知らされてなかった」「信頼されてなかったんじゃないか」と関係性に影響が出るかもしれません。
性交痛はパートナーに協力してもらいながら一緒に解決をしていく姿勢が大切です。
4. 性交痛を和らげる簡単な方法
「色々試してみたけど濡れない」という方に向けて、性交痛を緩和する方法を紹介します。
リューブゼリーを使う
リューブゼリーは、性交痛を緩和してくれる潤滑ゼリーです。成分のほとんどは不純物を取り除いた純水であり、身体への影響がほぼないため多くの医療機関から支持を得ています。
リューブゼリーの特徴は、男性にも使用でき、コンドームとの併用も可能です。また妊娠中や妊活中の方も安心して使用できます。使い方は簡単で清潔にした手に500円玉ほどの大きさのゼリーを取り、膣に優しく塗り込むだけです。塗るタイミングが早すぎるとゼリーが乾いてしまうため、行為の直前に塗るのがベストなタイミングです。
性交痛が起きにくい体位
膣のお腹側は、神経が集中していて敏感なため当たらないように配慮が必要です。
・ストッパー正常位
パートナーの腰に手を当てることで、挿入する深さを調整できます。
・たすきがけ(脚絡み正常位)
正常位で、覆いかぶさるパートナーの腰に両手と両足をからめます。
自身の両手と両足をからめ、パートナーの動きをコントロールできるため、痛みを抑えられます。
・添い寝後背位
お互いが横向きで添い寝をするような状態で挿入します。
挿入が浅い体位ですが密着度が高いため、満足の得られる体位です。
・敷き小股(うつ伏せ後背位)
うつぶせになって、女性は両足をまっすぐ伸ばします。下側になる女性のおしりの厚みによって挿入が浅くなるため奥の方への刺激が和らぎます。リューブゼリーの使用や体位の工夫をしても痛みが緩和されない場合は根本的な治療が必要なケースが多いため、専門の医療機関を受診するようにしましょう。
まとめ
性交痛は「濡れない」が原因で起こることが多いです。濡れない原因は、様々あり自身では原因を特定するのは難しいかもしれません。また濡れにくさを改善する方法や性交痛を緩和する方法を試したうえで「濡れない」「性交痛が治らない」場合には、専門の医療機関で診察を受けることが必要です。
当院では、性交痛の治療に詳しいスタッフによるカウンセリングを受けられます。性交痛でお悩みの方は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。
満行 みどり
略歴
国立佐賀医科大学(現佐賀大学)医学部卒業。その後九州大学医学部付属病院第二外科、佐賀県立病院などで外科、救命救急、麻酔科全般を習得。
聖心美容外科東京院、大阪院、福岡院にて勤務後、横浜院院長、全国診療医長を歴任。
婦人科形成、脂肪吸引を始めとする多くの症例に携わる。
レーザーによる女性器の若返り治療、膣の引き締め、外陰部形成のライセンスをアメリカのビバリーヒルズにて日本人の女医として初めて習得。東京の広尾に、日本人初となる女医による女性器形成専門クリニック、みどり美容クリニック・広尾を開院する。また「女性器形成」「女性性機能障害」のスペシャリストとして、様々な論文執筆、講演会、ドクターへの指導を行う。
資格
所属学会