更年期を迎えた女性のなかには、性交痛のために性交を継続できない人がいます。性欲があり、夫やパートナーとの性交を楽しみたいのに、痛みでそれが不可能になるのはつらいことです。しかし体調を整えたり婦人科クリニックなどで治療を受けたりすれば、また気持ちのよい性交を楽しめるようになるかもしれません。この記事では、更年期の女性に性交痛が起きる原因を解説したうえで、対処法や治療法を紹介します。 

更年期は濡れないから痛い?

結論を先に紹介すると、更年期の女性の性交痛の多くは、濡れないことで生じます。膣分泌液の不足が、更年期の性交痛の主な原因になっています。膣分泌液は性交においては、粘り気のある液体が絶えず膣に供給されることで、陰茎(男性器)が膣壁(膣の内側の表面)を強くこすっても痛みを生じさせず、快感を呼び寄せます。しかし濡れていないと陰茎が激しく膣壁をこするので痛みが走り、これが性交痛になります。

濡れとは何か

更年期になると膣分泌液が出にくくなるメカニズムを解説する前に、濡れとはなにかついて解説します。濡れていない状態では性交時に痛みが発生しやすく、濡れについて把握することが性交痛を抑えるためにも大切です。

膣分泌液とおりものは似て非なるもの

膣は非常に重要な臓器なのでさまざまなバリアがあります。膣分泌液やおりものも膣を守るバリアの一種です。両者を混同している方もいますが、異なるものです。どちらも女性の膣を守るためには欠かせません。

性的刺激とは関係なく出てくるおりもの

おりものは子宮や膣からにじみ出てくる分泌物や古くなった細胞などの総称で、性交と関係なく出現します。おりものは邪魔なものに感じるかもしれませんが、膣内に潤いを与え細菌やウイルスなどの侵入を阻止する役目があります。そのため、おりものの分泌量が少なくなってしまうと、感染症などにかかりやすくなるので注意してください。

性と深い関係にある膣分泌液

性的興奮や性交による快感によって分泌されるものを、膣分泌液と呼んでいます。膣分泌液は無色透明で粘り気があります。膣分泌液は膣壁の前方上部にあるスキーン腺から出てくるものと、やはり膣内にあるバルトリン腺から出てくるものがあります。また、子宮頚管から出る分泌液も膣分泌液に含まれることも特徴です。膣分泌液は混合液なわけですが、その主成分は血漿(けっしょう)という血液の成分になっています。

ホルモンが関与

性的に興奮すると脳が膣に命令を出し、バルトリン腺などから膣分泌液が出てきます。そしてこの以下の「性的興奮→脳→バルトリン腺など→膣分泌液の出現」ホルモンが関与しており、性的に興奮した人の膣が濡れてくるメカニズムになっています。

・性的興奮
・脳
・バルトリン腺など
・膣分泌液の出現

本来であれば性交時には、膣分泌液によってスムーズに男性器が挿入できるような仕組みになっています。しかし十分に濡れていない状態では男性器の受け入れが難しく、痛みなどが起こる原因です。

なぜ更年期に濡れにくくなるのか

更年期になると性的に興奮しているのに濡れなくなるのは、バルトリン腺が機能しにくくなり膣分泌液が出にくくなるからと考えてよいでしょう。

更年期に、このような症状が起きるのはなぜでしょうか。具体的な理由について把握しておくことが、濡れにくくなるのを防ぐためにも大切です。

ホルモンバランスが乱れるから

更年期になると閉経によってホルモンバランスが乱れるので、その影響で濡れにくくなることがあります。ホルモンバランスが乱れると、膣や周辺部分に変化が訪れるのが特徴です。ホルモンバランスの乱れに伴って、皮膚や粘膜が薄くなってうるおいも失われます。ホルモンバランスが乱れてしまうことは避けられないため、閉経時には意識的にトレーニングなどをおこなうことが大切です。

バルトリン腺に関わる病気にも注意を

またバルトリン腺が腫れて痛みが生じるバルトリン腺炎やバルトリン腺膿瘍などは、更年期の方に多い病気です。若い時期には自分の能力で、回復出来ていても加齢と共に回復力が落ちてくるのも原因として挙げられます。不調を感じているなら産婦人科などに、相談するなどの対策が必要です。

膀胱炎や感染症も性交痛をもたらす

性交痛には、性のメカニズムによるもの以外にも原因が考えられます。それは膀胱炎や感染症といった病気です。膣にうるおいがなくなっている状態での性交は、膣壁などを傷つける可能性があります。膣壁についてしまった傷から雑菌などが侵入して、感染症につながるでしょう。膀胱炎や感染症を防ぐためには十分に膣を濡らしてから、丁寧に男性器を挿入することがおすすめです。

膀胱炎と性交痛

女性は更年期に差し掛かると膣内の潤いが不足するようになって、細菌やウイルスなどから膣内を守る力が弱くなります。結果として膀胱炎につながってしまい、日常生活で痛みを感じてしまう状態になるケースは多いです。また性交時に十分に濡れていない状態の場合、男性器を受け入れた際に抵抗力が足りずに膀胱炎になってしまうかもしれません。

感染症と性交痛

感染症によって膣内に異常があると性交痛が起きやすい原因といえるだけでなく、場合によってはパートナーにも感染してしまうかもしれません。膣内に異常を感じているなら性交は避けて、産婦人科などで診断を受けることが大切です。感染症は初期段階では簡単に治るものもありますが、進行してしまうと大きな問題に発展する恐れもあります。また性交時に膣壁にキズなどがついてしまって、そこから細菌やウイルスが侵入して感染症になるリスクもあるでしょう。

快感を取り戻すための取り組み

ここからは、再び性交による快感を取り戻すための取り組みを紹介します。更年期障害によって、性交の楽しみまで無くしてしまうのはもったいないといえるでしょう。具体的な快感を取り戻すための仕組みについて理解しておくことが大切です。注意点としては女性側だけが取り組むのではなく、パートナーにも説明をして一緒に取り組むようにしましょう。

更年期障害の治療を受ける

更年期障害はすべての女性で起こることなので、産婦人科などでは更年期障害に対して治療を行っています。一人一人の女性が日常生活に不安を抱えることなく、安心して快適に過ごせるようなサポートをしてくれる産婦人科も多いです。自分だけで更年期障害で悩むのではなく、専門的な知識を持っている産婦人科に相談してみましょう。更年期障害の方法は数多くあるので、自分に合った方法で治療しましょう。

興奮できる性生活を取り戻す

興奮できる性生活を取り戻して膣分泌液の分泌量を多くする方法ですが、パートナーと協力しながら進めることが大切です。パートナーとコミュニケーションを取り雰囲気を高めることが、大切といえるでしょう。他にも潤滑ゼリーやラブグッズの活用なども有効です。日常的にパートナーと性交をおこなうことは素晴らしいことですが、マンネリ化していると性的興奮が得にくくなります。

まとめ

更年期を迎えた女性が性交痛のために、性交から遠ざかるのは残念なことです。性交痛は、原因を取り除けば抑制することができます。快適な性生活を取り戻すためにも、対処や治療に取り組んでみませんか。膣の潤いが悪くなっていると悩んでいるケースは多いですが、実際には快適な性生活を取り戻すことはできます。自分に合った方法を考えながら更年期の性交は丁寧に行いましょう。