50代になると、女性には様々な変化が訪れます。
閉経、更年期……そんな身体の変化とともに膣も変わっていくのです。
「膣の中が変わるなんて知らなかった」そんな女性もいらっしゃるでしょう。
膣内に変化が訪れるとセックスの時に痛くて入らないといった性交痛が発生することがあります。
この記事では 50代の皆さんの性交痛について原因と治療方法を解説していきたいと思います。
性交時に感じる痛みの原因
では50代の痛くて入らないという性交痛の原因とはどういったものがあるでしょうか。
カンジダ外陰腟炎などの病気
痛くて入らないような痛みの原因として以下の2つの病気である可能性があります。
・カンジダ外陰腟炎
カンジダ属という菌によっておこる感染症で、腟炎と外陰炎が同時に起きることが多いです。
ヨーグルトのような白いおりもの、外陰部の腫れやかゆみなどの症状が出た場合を外陰腟カンジダ症と言います。
・子宮頸がん
子宮頚部は子宮の下の方の狭い末端部にあります。子宮と腟は子宮頚部によってつながっています。
子宮頚がんは、通常、一定の時間をかけてゆっくりと増殖します。
がんが子宮頚部に発見される以前の段階として、子宮頚部の組織に正常でない細胞が出現しますが、
この変化を異形成といいます。その後、がん細胞が増えはじめ、子宮頚部の深いところまで達したり、周辺に拡がったりします。
どちらも可能性は低いですが、違和感があったり、膣の奥の方がズキズキと痛かったりする方は婦人科に行ってみましょう。
萎縮性膣炎
萎縮性膣炎は、女性ホルモンであるエストロゲンの量が低下することにより、膣の壁が薄くなる疾患です。
アメリカの家庭医学会(AAFP)は、閉経後の女性の40%以上が萎縮性膣炎にかかっていると報告しています。
平均的な閉経年齢は50〜51歳ぐらいと言われているため、50代で痛くて入らないといった性交痛を感じる際は、萎縮性膣炎が原因のことが多いと考えられます。
また、慢性病のため、治療しないと治りませんが、ほとんどの人がその存在を知らず、症状を訴える女性は20%程度に留まります。
萎縮性腟炎を発症すると、慢性の膣感染症や尿路機能障害にもかかりやすくなり、性交時に痛みを感じることもあるため、正しい知識を持ち、発症が疑われる時は、速やかな受診をお勧めします。定期的に検診を受けることも大切です。
痛くて入らない性交痛の治療方法
ではこれらの原因に対して、いったいどんな治療方法があるのでしょうか。
セルフケア
・前戯を長くしてもらう
膣の乾燥は多くの人が悩んでいる症状です。これに対するセルフケアとして、「前戯を長くしてもらう」「潤滑ゼリーを使う」ことが挙げられます。
前戯は膣を濡らすために必要な時間です。
その時間をもっと長くしてみましょう。「まだ濡れてないから待って」などの意思表明をすることが大切です。
・潤滑ゼリーを使う
潤滑ゼリーを使う場合はローションと混同しないように気を付けましょう。
潤滑ゼリーは膣内の滑りをよくしてくれるので、あまり濡れなくなったと思う方は試してみるとよいでしょう。
・エストリオールを摂取する
エストリオールとは、女性ホルモンエストロゲンに似た働きをする成分のことです。
大豆などの食品に含まれているもので、イソフラボンが代謝されるときに発生します。
エストロゲンと同じように膣の潤いを保つ働きがあるので萎縮性膣炎などに効果があります。
今は手軽にサプリやクリームタイプのものなど買えます。
婦人科へ行く
・診察を受ける
カンジダ外陰腟炎や子宮頸がんの疑いがある・心配がある方はまずは婦人科を受診することをおすすめします。
保険適用の治療になれば治療費を安く抑えられます。
・ホルモン補充法
閉経前後の性交痛は、エストロゲンなどのホルモン補充療法で改善可能と言われています。エストロゲンを補うことをホルモン療法(HRT)といいます。
HRTには経口剤、貼付剤、塗布剤などの種類があります。
症状や体質に合わせて服用方法を決めますので担当医とよく話し合ったうえで服用方法を決めましょう。
通常、子宮体がんを予防するために「黄体ホルモン」剤を一緒に服用してもらいます。
女性器形成・婦人形成のクリニックへ行く
婦人科に行っても治らない、または原因がわからなかった場合、女性器形成・婦人形成のクリニックへ行くことをおすすめします。
女性器形成・婦人形成のクリニックは女性器の専門クリニックです。
お悩みが解決されないようであれば、女性器形成・婦人形成のクリニックで相談をしてみましょう。
ただ、こちらは保険適用外の治療が多いので注意しましょう。
レーザー治療
萎縮性膣炎はレーザー治療で解決ができます。
レーザー治療は、当医院では主にインティマレーザーというレーザーを使って治療をしていきます。
このインティマレーザーは、Vタイトニングという膣のゆるみや引き締めを行うレーザーとして知られています。
インティマレーザーは膣の引き締め効果が一般的に知られていますが、「膣の若返り」の効果もあります。
このレーザーを照射することでエストロゲンを活発化させ、膣環境を改善します。
これが「膣の若返り」ともいわれているこの治療方法で、膣内のうるおいを取り戻すことができます。
切開などはない手術なので精神的な不安や痛みなどはほとんどありません。
粘膜の状態を詳しく見てから正しい治療を行う必要がありますので専門のクリニックを受診しましょう。
ダウンタイム
施術後3日間は膣内を安静にして頂きます。
治療は10分~15分ほどで終わり、日帰りでの治療が可能です。
施術中も痛みを感じることはほとんどなく、安心して治療を受けられます。
治療当日はシャワーをしてもらいますが、翌日から入浴可能です。
おわりに
50代の自分の身体と向き合うことはとても大変なことです。痛くて入らないという性交痛のお悩みも多くの方が抱えています。
お悩みを抱える方の一助になれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
満行 みどり
略歴
国立佐賀医科大学(現佐賀大学)医学部卒業。その後九州大学医学部付属病院第二外科、佐賀県立病院などで外科、救命救急、麻酔科全般を習得。
聖心美容外科東京院、大阪院、福岡院にて勤務後、横浜院院長、全国診療医長を歴任。
婦人科形成、脂肪吸引を始めとする多くの症例に携わる。
レーザーによる女性器の若返り治療、膣の引き締め、外陰部形成のライセンスをアメリカのビバリーヒルズにて日本人の女医として初めて習得。東京の広尾に、日本人初となる女医による女性器形成専門クリニック、みどり美容クリニック・広尾を開院する。また「女性器形成」「女性性機能障害」のスペシャリストとして、様々な論文執筆、講演会、ドクターへの指導を行う。
資格
所属学会