「性交痛の原因を調べたけど、ピルしか心当たりが無い」
「ピルの服用が本当に性交痛に繋がるのか知りたい」
このような悩みを抱えていませんか?
ピルは避妊効果が高く、月経痛の軽減にも効果があることから、日本でも徐々に普及が進んでいますが、副作用が多い薬でもあります。
この記事では、ピルの使用による性交痛の問題を詳しく解説します。
ピルと性交痛の関係、原因、そして改善方法について、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
目次
性交痛の原因
性交痛は、多くの女性が経験する悩みの一つです。その原因は様々ですが、主に以下の5つが挙げられます。
- 心理的要因:ストレスや不安、緊張、過去のセックスへのトラウマ
- 身体的要因:生まれつきの体質、処女膜強靭症
- ホルモンバランスの乱れ:更年期、妊娠、出産後
- 婦人科疾患:子宮内膜症、子宮筋腫、感染症など
- 薬剤の影響:ピルなどのホルモンに影響を及ぼす薬剤の服用
これらの要因が単独で、または複合的に作用して性交痛を引き起こすことがあります。
本記事では、特にピルと性交痛の関係に焦点を当てて解説していきます。
ピルと性交痛の関係
ピルは避妊や月経痛の軽減などを目的に広く使用されていますが、その副作用の中に性交痛に繋がるデメリットがあることはあまり知られていません。
直接的な作用はないものの、ピルの服用がホルモンバランスに影響を与え、それが性交痛の原因となる可能性があるのです。
ピルの種類と成分
ピルは様々な用途に合わせて数多くの種類が存在しますが、ここでは以下の4種類を紹介します。
- 中用量ピル:エストロゲンとプロゲスチンのホルモンを中程度の濃度で含む経口避妊薬です。
- 低用量ピル:エストロゲンとプロゲスチンのホルモン量が低い経口避妊薬です。
- 超低用量ピル:エストロゲンの量がさらに少ない経口避妊薬です。
- アフターピル:緊急避妊薬として使用され、性交後72時間以内に服用することで妊娠を防ぐ薬です。高用量のホルモンが含まれており、一般的に一時的な使用に限られます。
これらのピルは避妊だけでなく、月経痛の緩和やホルモンバランスの調整にも使用されます。種類によってエストロゲン(女性ホルモン)の濃度が違い、濃度が高ければ高いほど、ホルモンバランスに大きく影響してしまいます。
ピルを服用すると女性ホルモンが減少
ピルを長期的に服用すると、体内の女性ホルモン分泌量が減少することがあります。ピルに含まれる合成ホルモンが体内のホルモンバランスを調整するため、自然な女性ホルモン(特にエストロゲン)の分泌は不要であると体が判断してしまい、抑制されると言われています。
具体的には以下のようなメカニズムが働きます。
- 1:ピルの服用により、脳下垂体からのFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)の分泌が抑制される
- 2:FSHとLHの減少により、卵巣でのエストロゲン産生が低下する
- 3:エストロゲンの減少が膣の環境に影響を与える
女性ホルモンが減少すると乾燥する
エストロゲンは、膣の潤滑液を分泌させる重要な役割を果たしています。エストロゲンが減少すると、以下のような変化が起こります。
- 1:膣の粘膜が薄くなる
- 2:膣壁の弾力性が低下する
- 3:潤滑液の分泌量が減少する
- 4:デリケートゾーンが乾燥してしまい、様々な症状を引き起こす
これらの変化により、膣の乾燥が起こり、性交痛の原因となる可能性があります。
乾燥からくる性交痛の症状
膣の乾燥が原因の性交痛には、以下のような症状が見られます。
- 膣の入り口付近が痛い
- ひりひりする痛みがある
- 痛むところから出血する
- 挿入できるけど性交時に痛くてつらい
- 前戯をしてもあまり膣内部が濡れない
- 昔は濡れたのに久しぶりにしたら痛くて出来ない
これらの症状は、膣の乾燥によって膣壁が薄くなり、摩擦に弱くなっていることが原因です。
ピルが原因の性交痛かどうかチェック
ピルが性交痛の原因かどうかを判断するには、他の要因も考慮する必要があります。
以下のチェックリストを参考にしてください。
ストレスや緊張:最近、特にストレスが多い、または性行為に対して緊張や不安がある
- 例:仕事の締め切りが近い、新しい環境に慣れていない など
- 対策:リラックス法の実践、カウンセリングの利用
前戯が不十分:十分な愛撫や前戯がないまま挿入を試みている
- 例:時間に追われて急いでいる、コミュニケーション不足 など
- 対策:パートナーとの対話、十分な時間の確保
出産:最近出産を経験した
- 例:出産後6ヶ月以内である、母乳育児中 など
- 対策:産後の回復期間の確保、医師との相談
更年期:年齢的に更年期に入っている可能性がある
- 例:45歳以上で月経不順がある、ホットフラッシュがある など
- 対策:ホルモン補充療法の検討、生活習慣の改善
婦人科系の病気:子宮内膜症や子宮筋腫などの診断を受けている
- 例:月経痛が強い、不正出血がある など
- 対策:定期的な婦人科検診、適切な治療の継続
これらの要因がない場合、ピルが性交痛の原因である可能性が高くなります。ただし、自己判断は避け、専門医に相談することをおすすめします。
膣の乾燥を改善する改善方法2つ
ピルが原因の性交痛、特に膣の乾燥に対しては、以下の治療方法が効果的です。
レーザー治療
インティマレーザーなどのレーザー治療は、膣壁の再生を促進し、潤いと弾力を取り戻すのに効果的です。この治療は痛みが少なく、短時間で終わるため、多くの患者さんに選ばれています。
レーザー治療の流れ
- 1.初診・カウンセリング:症状の確認と治療計画の立案
- 2.治療当日:局所麻酔を行い、専用の機器で膣内にレーザーを照射(約15分)
- 3.術後ケア:1〜2日の安静後、通常の生活に戻れる
- 4.フォローアップ:1〜3ヶ月後に効果の確認と必要に応じて追加治療
レーザー治療の効果
- 1.膣の潤い・弾力性の回復
- 2.性交痛の軽減
- 3.尿失禁の改善
- 4.膣の緩みの改善
リューブゼリー
医療用のリューブゼリーは、膣の潤いを補う即効性のある方法です。性行為の前に使用することで、摩擦を軽減し、痛みを和らげることができます。ただし、一時的な対処法であり、根本的な解決にはならない点に注意が必要です。
リューブゼリーの使用方法
- 清潔な手で適量のゼリーを取り出す
- 膣の入り口や内部に塗布する
- 必要に応じて性行為中にも追加する
注意点
- 使用期限を確認する
- 過度の信用は避ける、あくまで補助用のゼリー
膣の乾燥を防ぐセルフケア
日常生活でも膣の乾燥を防ぐためのケアを行うことが重要です。以下に効果的なセルフケア方法を紹介します:
デリケートゾーン専用の保湿液
デリケートゾーン専用の保湿液を使用することで、日常的に膣の潤いを保つことができます。刺激の少ない成分で作られているため、安心して使用できます。
保湿液の選び方
- 無香料・無着色のものを選ぶ
- アルコールフリーのものを選ぶ
- pHバランスを整える成分が含まれているものを選ぶ
使用方法
- 入浴後など、清潔な状態で使用する
- 清潔な手で適量を取り、デリケートゾーンに塗布する
- 優しくマッサージするように馴染ませる
- 毎日継続して使用する
効果を実感するまでの期間
個人差はありますが、多くの場合2〜4週間程度で効果を実感し始めます。
前戯や体位の工夫
十分な前戯を行うことで、自然な潤いを促進することができます。また、痛みを感じにくい体位を探すことも重要です。パートナーとのコミュニケーションを大切にし、お互いに快適な方法を見つけていくことが大切です。
前戯の工夫
- 時間をかける:前戯に十分な時間をかけることで、自然な潤いを促進します。
- マッサージ:デリケートゾーン周辺を優しくマッサージすることで、血行を促進し、潤いを増やします。
- コミュニケーション:パートナーとお互いの好みや気持ちを共有し、リラックスした状態を作り出します。
体位の工夫
- 痛みを感じにくい体位を試す:例えば、側臥位(横向き)や背面位(後ろからの挿入)など、膣への圧力が少ない体位を試してみましょう。
- 角度を調整する:挿入の角度を調整することで、痛みを軽減することができます。
- クッションを使用する:クッションを使って体をサポートし、快適な体位を見つけることができます。
ピルが性交痛の原因か気になるときはクリニックへ相談
ピルが性交痛の原因ではないかと疑われる場合、自己判断でピルの服用を中止するのは危険です。ピルには避妊以外にも様々な効果があり、急に中止することで体調を崩す可能性があります。
当院では、女性の院長が完全予約制の個室で、全ての患者様にカウンセリングからアフターケアまで対応します。安心して診察できるため、デリケートゾーンのお悩みを抱えている方はお気軽にご相談ください。
性交痛は決して恥ずかしがる必要のない症状です。適切な治療を受けることで、多くの場合改善が可能です。早めの受診と適切な対処で、快適な性生活を取り戻しましょう。
最後に、性交痛の問題は身体的な側面だけでなく、心理的な側面も大きく影響します。パートナーとのコミュニケーションを大切にし、互いの理解と協力のもとで問題解決に取り組むことが重要です。専門医のアドバイスを受けながら、自分に合った対処法を見つけていくことをおすすめします。
満行 みどり
略歴
国立佐賀医科大学(現佐賀大学)医学部卒業。その後九州大学医学部付属病院第二外科、佐賀県立病院などで外科、救命救急、麻酔科全般を習得。
聖心美容外科東京院、大阪院、福岡院にて勤務後、横浜院院長、全国診療医長を歴任。
婦人科形成、脂肪吸引を始めとする多くの症例に携わる。
レーザーによる女性器の若返り治療、膣の引き締め、外陰部形成のライセンスをアメリカのビバリーヒルズにて日本人の女医として初めて習得。東京の広尾に、日本人初となる女医による女性器形成専門クリニック、みどり美容クリニック・広尾を開院する。また「女性器形成」「女性性機能障害」のスペシャリストとして、様々な論文執筆、講演会、ドクターへの指導を行う。
資格
所属学会